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歯と骨粗しょう症

歯と骨粗しょう症

みなさん、こんにちは
水野歯科クリニックです。

今回は歯と骨粗しょう症についてお話ししたいと思います。

骨粗しょう症とは
骨密度の低下によって骨がもろくなり、骨折しやすくなる病態です。

前回、骨のリモデリングについてお話をしましたが、
骨粗しょう症の方は、骨が作られるスピードより骨が壊されるスピードのほうが速くなり骨が弱くなります。

https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/08-%E9%AA%A8%E3%80%81%E9%96%A2%E7%AF%80%E3%80%81%E7%AD%8B%E8%82%89%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E9%AA%A8%E7%B2%97%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86%E7%97%87/%E9%AA%A8%E7%B2%97%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86%E7%97%87#:~:text=%E9%AA%A8%E7%B2%97%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86%E7%97%87%E3%81%A8%E3%81%AF,%E7%8F%BE%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
MSDマニュアル家庭版 骨粗しょう症とは より

歯科とは無関係のように思われますが、実は大きく関係しています。

一番言われていることは

骨粗しょう症の薬を飲むと歯を抜けなくなる。

じつはこれ、一昔前までは当たり前でした。

骨粗しょう症の薬の中の一種であるBP製剤(ビスホスホネート系)の薬を服用しているときに歯を抜いたりすると骨が腐ってしまう
BRONJ(ビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死群)が起こるといわれていました。

骨粗しょう症の薬は骨のリモデリングを止める役割があります。
歯を抜いた際に傷口の中には骨が丸見えになります。

傷口は歯肉と骨と両方治癒するのが普通ですが、骨粗しょう症のお薬を服用している方は骨のリモデリングが止まっているため骨の治りが悪く感染を起こすことがあります。
これがBRONJの機序と言われています。

なので一時期、歯科医師たちはこのBP製剤を悪魔の薬と揶揄しており、
整形外科に通院しているというだけで

大きい病院に行ってくれ
うちでは見れない

といったことが起きておりました。

しかし現在ではBP製剤以外にも顎骨壊死をひき起こす薬がいくつかあり

デノスマブ(Denosumab)に関連する顎骨壊死(Denosumab-related osteonecrosis of the jaw: DRONJ)を包括して
骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(Anti-resorptive agents-related osteonecrosis of the jaw:ARONJ)という。
BP製剤やデノスマブに限らず、血管新生抑制薬(bevacizumab、sunitinib、rapamycin、Sorafenib tosylateなど)を含めた薬剤の副作用による顎骨壊死
を薬剤関連顎骨壊死(Medication-related ONJ: MRONJ)ということもある。
https://www.jsop.or.jp/atlas/alveolar-bone_jaw-lesions/aronj/
口腔病理基本画像アトラス 骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)より

このようにいくつかほかのお薬でも起こることがわかっています。

その後いろんな研究結果により
BRONJの発生頻度は、注射剤で0.1~10%,経口剤で0.001~0.005%程度
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinshumedj/58/5/58_5_201/_pdf/-char/en#:~:text=BRONJ%E3%81%AE%E7%99%BA%E7%94%9F%E9%A0%BB%E5%BA%A6%E3%81%AF%EF%BC%8C%E7%B1%B3%E5%9B%BD%E5%8F%A3%E8%85%94%E5%A4%96%E7%A7%91%E5%AD%A6%E4%BC%9A%E3%81%AE,%EF%BC%85%E3%81%A8%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82
BRONJ発生状況に関するアンケート調査より

ということがわかってきましたので
日本口腔外科学科よりこのようなやり方・手順で治療を行ってくださいという指標(ポジションペーパー)が2012年に出されました。
https://www.jsoms.or.jp/medical/work/guideline/bisphos01/
顎骨壊死に関するポジションペーパー

これにより服用開始から3年以内は休薬なし。
休薬しないといけない患者さんは3カ月休薬する。

という診断および治療方針を取ることになりました。

また、整形外科のほうでも歯科医に敬遠されるということで
最近はBP製剤よりもVD製剤(活性型ビタミンD製剤)を処方されることが多くなっています。

医療の進歩は本当に早いです。

技術や知識は荷物にはなりません。

常にアップデートし続けないと患者さんに失礼で不利益を被ってしまうと私は思っています。

お口の中に関すること、いつでもご相談ください。

院長 水野敦之